象の物語

気がついたら転生した魔法使いでした(または、とある象の物語)

 異世界転生モノ――言葉の意味合いからすれば補足無しにその通りなんだけれど、正確に伝えようとするなら「異世界転生」の逆パターン。ファンタジー世界の魔法使いが転生してこちらの世界に。カルチャーギャップによるドタバタとかこっそり魔法を使って無双とかそういう展開はなく、主人公・高梨遙の日常生活と、だんだんと思い出されていく前世ユスティナの記憶が並行して語られる。

 とまあ、これだけなら前世は前世・今世は今世とたいしたお話にもならないのだけれど、そうはいかない。勇者パーティーとして活動していた前世の仲間たちと、今世の生徒会役員の仲間たちがどこか似ていたり、主人公の前世の名前であるユスティナという単語がこちらでも重要な意味合いを持っていたり、と。話が進むにつれて前世と今世が重なりあっていくような展開で、どんどん続きを読みたくなる、そういう話でした。全85話完結済。

 

 転生モノって題材はともかく、それ以外はあまりなろうっぽくない話なんだけど。特に、異世界間の言語の翻訳の問題に言及しているあたりとか特に。

 例えば――先人に敬意を表し――あの世界の特殊なトンボのことを、私が最終的に「シリキレ・トンボ」と理解したとしよう。この場合、当然だが日本語の慣用句「尻切れ蜻蛉」との間には、何の関係もない。

 だがここで、一旦そのトンボのことを「シリキレ・トンボ」と理解したが最後、ユスティナたちが会話の中で「それはシリキレ・トンボだ」と言った時、果たしてそれが生物のトンボを指しているのか、それとも「中途半端な終わり方だ」と言っているのか、即座に判断がつきかねることがある。

――中間報告

 まあ本筋とはそこまで関係ない与太の部分だけれど、こういうシニカルな自己ツッコミあると一気に魅力が増すというところでして。