メイド進む

メイドは進むよどこまでも! / 番外編

 学校まるごと異世界に召喚され、みな剣士や魔法使いだなんて恰好・職業になってしまったにも拘わらず、主人公(女子高生)だけ何故か、メイド。非戦闘職なメイド。化学部の仲間がモンスターと戦ったり採集してる中、主人公は化学室でお留守番の内職生活。

 そんな、わりと生産職っぽい日常の異世界召喚モノ。便利な魔法っぽいスキルで細かい部分は省略しつつ、化学知識と設備でメイドやってるのが新鮮。っても、後々戦闘に巻き込まれたりチート能力得たりはするんだけれど。

 さばさばした女性っぽくない女性主人公の一人称で、長ったらしい心理描写も少なく*1、さくさく話が進む。展開もあっさりしててどんどんイベントが進行してくので、大変読みやすい。つい先日完結済で、番外編も終了。

 

 好きなのは、序盤、手探り手探りでサバイバル生活をしてるパートかなあ。中盤以降、一本道のお使いクエストのようになってる部分はどうしてもだれるし、終盤は能力上がり過ぎて何でも可能になってしまうのが、最初っからチート無双な話でないだけに、どうも。この辺りは上手くお話を畳むのは難しいってことなんでしょうが。

 番外編は番外編でいいね。特に召喚前の顧問視点での日常話。ゆるさと面白さと真面目さが独特の雰囲気。具体的にここがすごいってタイプではなく、雰囲気が好きとしか言いようがない。こんな。

「パンはパンでも食べられないパンって何だろう。それが第一回化学部ディスカッションの議題です」

〔……〕

「……ふらいぱん」

「角三君、それは甘いですよ。いいですか、世の中には鉄の塊を食べられる人が居ないとも限りません。そして、俺達は世界に鉄の塊を食べられる人が居るかどうか、確認する術を持たない以上、フライパンを『食べられないパン』とするのは早計です」

角三が言った正論は、あっという間に社長に撃墜された。

「いや、待て、社長。そもそもここで問いている問題は『食べられないパン』だ。それは一部の人間にとって、なのか、万人に食べられない物なのかを定義する必要がある」

そして鈴本がこういう事を言いだしたので、会議は紛糾した。

「そもそも、食べる、って何?飲み込めたらOKなの?」

――第一回化学部ディスカッション~パンはパンでも~

 

 ついでに。新作「乙女ゲームでジェノサイド!」の連載が始まっている。まだ序盤も序盤でなんともだが、こちらも面白そうで楽しみにしている。

*1:延々と鬱々くどくどした一人称での心理描写がダメというわけではない。それなりに好んで読む。ただし、ウェブ小説ではあまり求めていない、というのはある。