C†C 8
「CROSS†CHANNEL」総評
面白いか面白くないかで言えば、面白かった。
ただ大絶賛するほどではない、といったところ。単に、純粋に感動するには年を取ってスレてしまったなあ。もっと多感な頃にやっていたら、また違ったかもしれない。でも、どうだろ。多感な頃でも同じようにイマイチしっくりこないと首を傾げるかなあ。プレイ日記なんかつけながらやったから、物語に全没入せずにどこか醒めた目で見てしまったってのはあるかもしれない。
以下、ネタバレありの格納。
あー、たぶん自分は、先の読めないストーリー、想像すらしなかった結末、というものにかなり重きを置いてるのかな。もしくは、現時点では持っていないけれど提示されてみればしっくりとくる価値観・メッセージ。
この話は、この状況なら当然こう行き着くよねというストーリー展開で、「人は一人では生きていけない」という普遍的なメッセージに行き着く。論理の飛躍もなく、実に妥当な展開と真っ当な結末。無論、それが悪いわけではないし、その当たり前をきっちり描き出すのが難しいのは承知しているんだけれど。
んー、ストーリーがメッセージを伝えるものに成り下がって、ストーリー単体としてみるとやや不満ってことになるのかな。そこらへんは、小説ばっかでエロゲに馴染みがない感覚のずれってのもあるのかもしれない。エロゲという媒体上、ヒロインとどーこうする必要はあって、ストーリーはそのためのものになるし、優先順位としては下がる、のかな。たぶん。そこらへんは作品によってピンキリなんだろうけど、それは留意しておく必要はありそう。
ストーリー・演出的な意味では、一番楽しかったのは一周目と二周目なのよね。
一見平穏に見えるが描かれないだけで何か起こってるっぽい日常描写、そこからの叙述トリック種明かし。テキスト自体はほとんど変わっていないのに、一部のグラフィックをセピア色で表現するだけで、見事に騙されていたことに気付く。この見せ方は、立ち絵・背景があるエロゲならではの表現で、とても面白い。
太一、そして、この話の根幹を成すのは、ニーチェの永劫回帰・超人論あたりなのかしらん。聞きかじりのうろ覚えなんでよくわからないけど、ざっと調べた分ではそんな感じ。
それよりわかりやすいところで言えば、森博嗣の真賀田四季。7は孤独な数字だとか、人間は本質的に孤独であるとか、発想の根本的な部分に影響があるように感じられる。そうすると、太一は真賀田四季にまで至れなかった人間? 少なくとも、曜子が理想として見、強いと評する太一像は、そういう存在のように思える。
エッチシーンの体位から見る関係性。
前半での挿入は全て、後背位(バック)なのよね。心理学的にどうとかは知らないけど、一般的に男性からの目線で言うと、
- 征服感を感じられると言われている。
- また、獣のやり方と言われるように、危険が迫った際にすぐに挿入を中止して対応することができる(正常位などの他の体位では、普通に立ち上がるのに時間がかかる)。
- そして、顔と顔が向かい合わない。
その一方で、皆を送り返すことにしてからの後半の挿入シーンは、曜子ちゃんは逆レだから除くとして、正常位(美希)、対面座位(みみみ先輩)。こっちは顔が向かい合う。
この偏りはたぶん意図的で、こんなところにも太一の心情が表れてたりするのは細かいなあ。
書いてて散漫になってきたので、あとは箇条書きで簡単にメモ。
- 干渉することのできない別の世界への一方的な通信としてラジオ放送があるわけだけど、ストーリー的には太一から他のメンバーへの通信だけど、太一からこれを読んでる「私たち」へ向けた通信としても読める。というかそう自然と思える作りになっている。勿論、あのセリフは田中ロミオというライターが書いて、ゲームとして制作販売したスタッフがいて、ゲームとしてプレイしている私たちがいるからこそ、なのだけれど。
- そういう意味では、エロゲを暗喩した読みなんかは卓見な気がする。評価できるほどようわからんけども。
- 禁じ手かもしれないけど、全てが太一の妄想であったという読みは面白いかもしれない。他の7人も全て自分の中で作り上げた妄想。自分の作り上げた世界に閉じこもってしまって他者とは碌にコミュニケーションが取れない生徒が存在すると書かれているが、まさに外部から見た太一はそういう存在になっていて、自らの内部に友人を取り込み、自分にとって都合のいい世界で過ごしていた。その繰り返しの結果、皆を元の世界に送り返す=自分の内部世界から消去し、外界への接触を求めて覚醒する。そうすると、七香はこの内部世界の管理者で、太一を必死に引き留めていた、現状維持を推奨していたのは、それが存在意義だからとか? まあいくつかの事柄を無視した勝手な読みなんでボツだけど。