すこし・ふしぎ

やるおたちの、すこし・ふしぎ物語

 タイトルの「すこし不思議」は藤子・F・不二雄のSF的な意味でなく、そのまま文字通りの意味。ちょっとしたファンタジー要素アリの世界で、ミステリ風・ホラー風・サスペンス風と、一作ごとに毛色の違う日常系の連作短篇。全11話完結済。

 主役のやる夫・やらない夫・できる夫が26歳の設定なのだが、子供の心を残しつつ社会人というかオトナしてるのが珍しいし、またちょっと違った空気感を纏っていて面白い。

 伏線や展開を細部まで詰めて、しっかり作り込まれてるのはいいよね。情報の出し方とか、作り込んだ背景設定と必要な分の見せ具合とか、シリーズ全体の構成とか、きっちり計算されてるのは、小説とかだとそれなりに見るけど、やる夫界隈では少ないような気がする。投下しながら話を作っていく「即興型」なんてのが大分類として存在するわけだし。

 「妖精航路*1や、「虹の向こう側」と同作者だそうで。どれもストーリー以上に背景設定きっちり作り込む作風みたい。その分ストーリーはすっきり短めで、もうちょっと語られなかった過去なんかも読みたくはあるけれども。「虹の向こう側」は、ドラゴンの存在した伝説の時代と、人間の歩む科学の時代との衝突で、起こるべくして起こったという物悲しいファンタジー。こっちもよかった。

*1:先日感想を書いた。→