流れついた

やる夫は流れついたようです

 やる夫スレにはまったきっかけの作品。

 初めて読んだやる夫スレは覚えてない。学ぶ系スレ全盛期のころにいくつか読んだような記憶はある。そのときは琴線に触れることはなく、以後も存在は把握してたものの、それだけだった。

 読み出すようになったのが、半年前頃。時折、友人が感想を垂れ流しており、気になって読みはじめたのがこの作品。

 

 異世界転生+現代知識チート+ハーレムのよくあるパターン。ただ、その扱いが上手いというか妥当。

 転生の際に、英雄と呼ばれる強力な力を手に入れる。しかし、「主人公」として力を奮って中心に立つのではなく、平穏な生活が送れる地位を目指して行動する。日常生活で便利な魔法はともかく、無駄に強力な攻撃魔法を怖れ、なるべく使わないようにし、山賊狩りも危害を加えることを躊躇する。こういう性根は現代日本人として当然な感覚だろうし、等身大で好感が持てる。「それが仕事とはいえ初めて人を殺した……」みたいな葛藤・苦悩は、テンプレ的お約束ではあるのだろうけど、それでも、無視して話を作るには違和感が出てしまう問題なんじゃないかとは思う。そういうの無視しても面白い作品はあるけど、全体的な好みとして。

 

 テンプレ要素の扱いより印象に残ったのは、登場人物の頭が良いこと。意図を言葉の裏に含ませた貴族達の虚々実々のやりとりや、複雑な物事を複雑なまま書いている。誰が読んでもぱっと話がわかるようにするには、色んなことを単純化してシンプルにしなければいけないけど、複雑なものを単純にすれば抜け落ちてしまうものは出てくるわけで、わけわからんと読者に言われるリスクを背負って複雑なものを複雑なままに書くのは応援したい。

 ぶっちゃけ、読者の反応見てあとから解説役が語るとか、単純に自分で前提となっていることの描写不足だとか、結果的にそう見えてるって部分は結構ある気がするけども。